小児歯科とはPediatric dentistry
『小児歯科』では、主に0〜12歳くらいまでのお子さまを対象に、虫歯や歯周病の予防・治療、歯並びや噛み合わせの改善などを行ないます。
大人とは異なり、成長期にあるお子さまは歯や顎が日々成長し、歯が生え変わるので、小児歯科ではそのような成長を踏まえて予防や治療を行なうことが求められます。
治療を行なうときには、お子さまがご自分の症状や治療内容をきちんと理解できるよう、わかりやすい言葉で丁寧に説明することが大切です。当院では、治療を嫌がるときには無理強いせず、常に笑顔でやさしく接するなど、お子さまの気持ちになって考えることを心がけています。そして、歯科医院を「痛い・怖い場所」ではなく「楽しい場所」と思っていただき、将来気軽に通院していただけることを目指しています。
ここでは、大人とは異なるケアが必要になるお子さまの虫歯予防・治療や歯並びのことを中心にご説明します。
お子さまの虫歯予防Prevention
シーラント
お子さまの歯は、大人の歯に比べて軟らかいという特徴があります。また、奥歯の噛み合わせ面には複雑な形状の深い溝が多いので、汚れが溜まりやすいうえ、歯ブラシの毛先が届きにくく、磨き残しができやすくなります。『シーラント』は、この溝をあらかじめレジン(白いプラスチック)などで埋めておくことで、汚れを溜まりにくくし、虫歯を予防する処置です。
シーラントは歯の溝に薄く伸ばすので、時間が経つと少しずつとれてしまいます。また、強く噛んだり歯ぎしりすることでもとれてしまいます。その場合は、再び処置を受けましょう。歯科医院で定期的に診てもらうことで、シーラントがとれていてもすぐに対応してもらえます。
虫歯治療caries
お子さまが虫歯になると、ごく初期の虫歯であれば、進行止めの薬を使って経過をみることがあります。しかし、お子さまの歯は大人の歯に比べて軟らかいので、症状によっては、削ってインレー(詰め物)やクラウン(被せ物)で修復する治療、根管治療(※)などを行ないます。
※歯髄を取り、根管(歯髄の通っている管)を清掃・殺菌して薬剤を入れて密封し、クラウンで修復する治療。お子さまの虫歯は、以下のように年齢によって原因やなりやすい場所が異なるので、それに応じた予防や治療が必要になります。
1~2歳児の虫歯上の前歯の表側と裏側に発症することが多く、歯髄(歯の神経)に近い部分まで進み、奥の方で穴が広がっていることがあります。
授乳し終わってそのまま寝てしまうことが原因なので、“母乳虫歯”や“哺乳瓶虫歯”といわれます。哺乳瓶に牛乳や甘い飲み物を入れてダラダラと飲ませることを避け、寝る前は水かお茶を飲ませましょう。
歯と歯の間、奥歯の噛み合わせ面に発症することが多く、ひどくなると歯がボロボロになることがあります。
お菓子や甘い飲み物などおやつのダラダラ食べ、哺乳瓶で糖分の多い飲み物を飲みながら寝ることなどが原因です。おやつの内容や量を意識し、時間をしっかりと決めてダラダラ食べを避け、寝る前は水かお茶を飲ませましょう。
歯と歯の間・歯と歯ぐきの間・歯の裏側・奥歯とその前の歯の間に発症することが多く、ひどくなると黒い穴があいて歯髄にまで達します。
チョコレート・キャンディー・ガムなどの甘くて歯につきやすいお菓子や、ブラッシング時の磨き残しが原因です。おやつの内容や量を意識し、ブラッシング時はご家族の方が仕上げ磨きをしてあげましょう。
6歳前後になると、一番奥に生える6歳臼歯に発症することが多くなります。
6歳臼歯は生え始めてから完全に生え終わるまで時間がかかり、軟らかい状態が続きます。しかも、複雑な形状の深い溝が多いので、汚れが溜まりやすくなります。お子さまに規則正しい食生活を意識させ、ブラッシングを生活習慣の一環としてとらえられるようにしましょう。もちろん、ご家族の方が仕上げ磨きをしてあげることも大切です。
歯並びの治療Teeth Alignment
小児矯正
「子どもの歯並びが悪いのですが…」と、お子さまの歯並びを気にされるご家族の方からの相談が多く寄せられます。
上顎前突(じょうがくぜんとつ=出っ歯)・下顎前突(かがくぜんとつ=受け口)・叢生(そうせい=乱ぐい歯・八重歯)など、歯並びが悪いことを『不正咬合』といいます。
不正咬合だと、歯ブラシが歯と歯の間などに届かず、きちんと磨けないので、虫歯や歯周病、口臭の原因になります。また、見た目だけでなく噛み合わせも悪くなるので、きちんと噛めません。そして、噛み合わせが悪くなると、全身のバランスが乱れ、頭痛・耳鳴り・肩こり・腰痛などの不調を招くことがあります。
つまり、不正咬合をそのままにしていると、お口だけでなく全身の健康を損なう可能性があるのです。
そのような事態を避けるために、装置をつけて歯並びを整える『矯正治療』を受けることをおすすめしています。お子さまのときに受ける矯正治療を『小児矯正』といい、年齢や症状に合った装置を使って、歯だけでなく顎の骨を動かしながら、きれいな歯並び・正しい噛み合わせへと導きます。
成長期のお子さまの歯並びに問題がある場合、噛み合わせが顎や顔の成長に影響することがあるので、早めに矯正治療を行なった方が良い場合もあります。
しかし、お子さまの歯は乳歯列期(乳歯だけの時期)と混合歯列期(乳歯と永久歯が混在している時期)があり、小学校5~6年ともなると、乳歯があと数本という状態になります。歯の生え替わりは個人差があり、一概に年齢でくくることはできないので、ひとりひとりの症状に合った治療が必要です。
小児矯正は、お子さま自身の要望というよりご家族のご要望で受けられる方が多いですが、治療では装置をつける必要があるので、お子さまの気持ちを考えるようにしましょう。
小児矯正では、装置の扱いや管理がきちんとできていないと治療の進行が滞ることがありますが、お子さま自身が治療を嫌がっていると、このようなことが起こりやすくなります。そのため、治療を受ける理由をきちんと説明し、必要性を十分に理解してもらってから治療を行なうことが大切です。
小児咬合誘導
小児矯正は、骨格が成長・変化しない大人の方が受ける成人矯正(永久歯が生え揃ってから行なう矯正治療)とは異なり、顎の骨格の歪みの改善、上下の顎の骨の位置関係の改善、歯がきちんと並ぶスペースを確保するための歯列の拡大など、骨格や筋肉が成長する力を利用して、歯だけでなく骨格的に歯並びを改善する咬合誘導治療です。
一概に年齢でくくることはできませんが、成長期にあるお子さまの時期・混合歯列期(乳歯と永久歯が混在している時期)は、矯正治療を始めるのに最適な時期といえます。
小児矯正では、顎や歯列が正常な状態になるよう導くので、その後、成人矯正が必要になったときに抜歯などを回避できる可能性が高くなります。もちろん成人矯正にも効果がありますが、顎の骨格の歪みが改善できないなどのデメリットが生じることもあるので、小児矯正がおすすめです。
お子さまのお口の中の状態や、顎・身体の成長を見極め、適切な時期に適切な咬合移動を行ないましょう。
定期検診checkup
歯科医院は「歯が悪くなったら行く場所」でもありますが、「歯が悪くならないように病気を予防しに行く場所」でもあります。
痛み感じたらすぐに治す必要がありますが、より良いのは、まだ痛くなっていない部分を早めに発見して、すぐ治すことです。さらに良いのは、痛い部分を初めからつくらないことです。
そのためにあるのが、『定期検診』です。
乳歯や生えたての永久歯は虫歯になりやすいので、日頃からご家族の方がチェックするのはもちろん、歯科医院でのケアが必要になります。3~4ヵ月に1回は定期検診を受け、悪くなっている部分は治療を行ない、健康な部分には予防処置を行ないます。また、歯並びや生え替わりのチェック・処置も行ないます。
定期検診では、主に以下のような処置を行ないます。
ご自分で歯を磨ける年齢のお子さまには、正しい磨き方をご指導します。自分で歯を磨けないお子さまをお持ちのご家族の方には、仕上げ磨きの方法をご指導させていただきます。
いずれにせよ、お子さまが楽しくブラッシングに取り組み、ブラッシングを習慣づけられるようにすることが大切です。
酸の生成を抑制・自然治癒を促進・歯質強化する働きがあるフッ素を歯の表面に塗ることで、虫歯になりにくくします。
シーラント奥歯の噛み合わせ面の溝をあらかじめレジン(白いプラスチック)などで埋めておくことで、汚れが溜まらないようにし、虫歯になりにくくします。
特に5~12歳のお子さまは、乳歯が抜けたり永久歯が生えてきたりしてブラッシングしにくくなるので、虫歯を発症しやすくなります。お子さまのお口の健康を守るためにも、定期検診を欠かさずに受けましょう。