一般歯科General dentistry
『一般歯科』では、インプラント治療や矯正歯科などとは異なり、私たちにとってごく身近な、誰もが通院する可能性のある虫歯・歯周病・入れ歯の作製・定期検診などの処置を行なっています。
治療の大部分は、健康保険が適用される保険診療となり、日常生活に不自由しないように機能性・審美性を回復できる最低限の治療を受けることができます。
なお、インプラント治療や矯正歯科などは、さらなる機能性・審美性を追求する治療なので、健康保険が適用されない自費診療となります。
一般歯科のなかでも、虫歯についてはほとんどの方が「歯医者さんに治療を受けに行った」という経験があるかと思われますが、それほど発症する可能性の高い病気といえます。
ここでは、誰もがなるといえる虫歯に関することを中心にご説明します。
虫歯治療の流れFlow
お口の中には、数百種以上の菌が存在しています。そのなかでも、特に虫歯菌に飲食物から摂取した糖質がつくと、虫歯菌が粘性のある物質をつくりながら増え、白く軟らかい塊となります。これを『プラーク』(歯垢)といいます。
プラークができると、虫歯菌はその中で糖質を発酵させて酸をつくり出します。この酸によって歯の成分が溶かされる病気を『虫歯』といいます。
虫歯は、以下の条件が揃うと発症するとされています。
- 虫歯になりやすい歯質、歯並び、噛み合わせをもっている
- 虫歯菌が活発に働いている
- 糖質を頻繁に摂取している
- プラークが歯に付着した状態が長時間続いている
虫歯になっても、ごく初期の段階であれば自覚症状はなく、唾液の働きによって自然治癒します。しかし虫歯が進むと、痛む・しみるなどの症状を自覚するようになり、こうなってしまうと自然治癒することはありません。
虫歯の治療では患部を削る必要がありますが、軽症であれば削る部分が小さく浅いので、治療期間も治療費もそれほど負担にならずにすみます。しかし、重症になるほど削る部分が大きく深くなり、治療期間や治療費の負担が大きくなります。
そして一度削った歯は、どんなに丁寧に治療しても元の健康な歯に戻ることはなく、弱くなってしまいます。
つまり、いつまでも健康な歯でいるためには、虫歯にならないようにすることが大切なのです。
虫歯は細菌の働きによって発症する感染症なので、虫歯菌の働きの抑制やプラークの除去を意識し、日頃から丁寧なブラッシングを行なって積極的に虫歯予防に取り組むことが大切です。
虫歯の進行と治療方法
虫歯になっても、ごく初期の段階であれば自覚症状がないので、放置することでどんどん進んでしまいます。痛む・しみるなどの症状を自覚する頃には、相当進んでいると考えられます。
重症になる前に異変に気づき、すぐに治療を受けられるよう、虫歯の進行度と症状を知っておきましょう。
虫歯は、進行度によってCO~C4の5段階に分けられ、それぞれに応じた治療方法があります。
『C』は、虫歯という意味の専門用語Caries(カリエス)の頭文字から取ったものです。
- 経過観察
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症 状
歯の表面が白くなり、溝が黒くなり始めるなど、虫歯になりかけの状態です。本格的な虫歯になる前の状態なので、痛みはありません。
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治療方法
歯科医院で特別な治療を受けなくても、自然治癒で元の状態に戻ります。また、歯科医院で、歯にフッ素(※)を塗ってもらうことで、虫歯になりかけていた部分が修復され、進行を防げます。
※酸の生成を抑制・自然治癒を促進・歯質強化する働きがある、虫歯予防に効果的な物質。
- 初期
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症 状
歯が黒や茶色に変色し、小さく穴があいた状態です。変色はしていますが、虫歯が達しているのはエナメル質(歯の表面)だけなので、痛みはありません。ただし、冷たい物がしみることがあります。
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治療方法
患部をごく少量削り、レジン(白いプラスチック)を詰めて修復します。1回で治療が終わるうえに、保険診療なので治療費が低価格ですみます。
- 中期
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症 状
虫歯が象牙質(エナメル質の下にある歯の主要部分)に達した状態です。ズキズキと痛むことや、冷たい物・温かい物・甘い物がしみることがあります。
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治療方法
患部を削って型をとり、患部が小さければインレー(詰め物)、大きければクラウン(被せ物)で修復します。この段階であれば、歯髄(歯の神経)を失わずにすみます。
- 後期
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症 状
虫歯が歯髄(歯の神経)に達した状態です。
常に痛みがあり、激痛を感じることもあります。 -
治療方法
根管治療(※)を行なう必要があります。複雑な治療なので、治療期間がかかります。
※歯髄を取り、根管(歯髄の通っている管)を清掃・殺菌して薬剤を入れて密封し、クラウンで修復する治療。
- 末期
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症 状
歯冠(歯全体のうち歯ぐきの上に出ている部分)が溶けて、歯根(歯の根)しか残っていない状態です。歯髄が壊死しているので痛みはありませんが、虫歯が歯根まで進むと化膿し、痛みを感じるようになります。
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治療方法
歯が少しでも残っていれば、クラウンで修復できる可能性もありますが、残っていなければ抜歯し、インプラント・入れ歯・ブリッジなどで機能性・審美性を取り戻す必要があります。
虫歯予防のための“効果的なブラッシング方法”
「毎日歯磨きしているのに、虫歯になってしまった」という経験のある方はいらっしゃいませんか? ブラッシングが毎日の習慣になっているのはとてもいいことですが、習慣的であるがゆえに無意識に行ない、いつの間にか間違った磨き方の癖が身についていることがあります。また、歯並びによっては歯ブラシがきちんと届かず、細かい部分を磨き残してしまうことがあります。そのため、正しく効果的なブラッシングができている方は、意外と少ないかと思われます。
では、効果的なブラッシングとはどのようなものでしょうか? それは、虫歯になりやすい部分を中心に、プラークをきちんと落とせるブラッシングです。毎日磨いていても、プラークをきちんと落とせていなければ、効果的なブラッシングとはいえません。
虫歯予防への一番の近道は、この“効果的なブラッシング方法”です。
ぜひマスターして、正しくブラッシングできるようにし、お口の健康を守りましょう。
正しいブラッシング方法
ブラッシングするとき、つい力を入れてゴシゴシ磨いてしまう方も多いのではないでしょうか。それが、「汚れをしっかり落とせている」という勘違いの元になります。しっかり落とせるどころか、力を入れることで歯ブラシの毛先が寝て、歯に押し当てるだけになってしまい、しっかり落とせない原因になります。
しかし、ペンを持つように歯ブラシを持てば、余計な力が入らずにすみ、適度な力できちんと汚れを落とすことができます。
歯の表面を磨くことは大切ですが、磨きにくく虫歯になりやすい“歯と歯の間”“歯と歯肉の間”“奥歯の噛み合わせ面”を丁寧に磨き、意識的に汚れを落としましょう。
歯ブラシの角度を45°にすることで磨きにくい部分にも毛先が届き、汚れが落ちやすくなります。
歯ブラシの正しい選び方
カーブしているものは、奥の方が磨きにくくなります。丸みがあるものであれば、手になじみ持ちやすくなります。力が毛の部分にしっかり伝わるよう、ネック部分が細くないものを選びましょう。
毛の硬さ通常は“ふつう”がおすすめです。出血しやすいなど歯ぐきが弱い方には、歯ぐきを傷つけにくい“やわらかめ”、磨く力が弱い方には“かため”が向いています。
毛の形状と長さ毛先がギザギザのものよりも、均一の形状の方が、均等に力がかかってきちんと磨けます。縦3列に植毛されており、縦の長さが親指の幅くらいのものを選びましょう。
※より効果的なブラッシングを行なうため、同じ歯ブラシを使い続けるのではなく、1ヵ月に1回を目安に交換しましょう。より効果的なブラッシングのための補助用具
歯ブラシと同じような形状をしており、毛先の部分がひとかたまりになっている歯ブラシです。普通の歯ブラシでは磨きにくい部分をピンポイントで磨くことができるので、通常の歯ブラシでブラッシングした後、ワンタフトブラシで細かい部分を磨きましょう。
ある研究によると、ワンタフトブラシを使ったときのプラークの除去率が、非常に高いことがわかっています。
歯と歯の間についた汚れは、歯ブラシでは落とせません。しかしデンタルフロスを使うことで、歯ブラシでは落とせない汚れを落とすことができるので、虫歯予防には最適です。
歯間ブラシデンタルフロスと同じく、歯と歯の間についた汚れを落としますが、歯間ブラシは、歯ぐきが下がってしまった方、歯と歯の間の隙間があいてきてしまった方、ブリッジなどを行なっている方におすすめの清掃補助用具です。
噛み合わせTeeth Alignment
「噛み合わせが良い」または「噛み合わせが悪い」という言葉を聞いたことがあるかと思われますが、皆さまはご自分の『噛み合わせ』ついて考えたことがありますか? ご自分の噛み合わせが良いまたは悪いとわかっている方は、意外と少ないのではないでしょうか。
噛み合わせが悪いことを『不正咬合』といい、主に以下のような種類があります。
- 上顎前突(じょうがくぜんとつ)……出っ歯。上の歯が全体的に前に出ている
- 下顎前突(かがくぜんとつ)……受け口。下顎が前に出ている
- 反対咬合(反対咬合)……受け口。下の歯が上の歯より前に出ている
- 過蓋咬合(かがいこうごう)……上の前歯が深く噛んで下の前歯が見えない
- 切端咬合(せったんこうごう)……上下の前歯の先端が重ならずに合わさる
- 叢生(そうせい)……乱ぐい歯・八重歯。歯並びがデコボコしている
- 開咬(かいこう)……前歯が噛み合わない
噛み合わせが悪いと全身に以下のような影響が出て、心と身体の健康を損なう可能性があります。
- お口の周りの筋肉に負担がかかるので、顎関節症を発症しやすくなる
- 食べ物をきちんと噛めないので、胃腸に負担をかける
- 唾液の分泌量の減少や口呼吸を招くので、虫歯や歯周病を発症しやすくなる
- 身体が歪むので、頭痛・肩こり・腰痛・慢性的な疲労感や倦怠感・イライラなどを招く
- 口元が独特な形状になるので、見た目や発音・滑舌が悪くなる
以下の①~③のような簡単なチェックで、ご自分の噛み合わせを確認してみましょう。
- 唇が閉じず歯が見えてしまう
- 下の唇を上の前歯で噛んでしまう
- 上の唇が下の唇で隠れてしまう
- 上の歯が下の歯よりも内側にある(部分的なものも含む)
- 上下の歯の間に隙間が空きすぎている(ある程度の隙間があるのは正常)
- 上の歯が外側にあっても、下の前歯がほとんど見えない
- 歯並びがデコボコしている
- 歯と歯の間の隙間が広い
- 割り箸が傾いて水平にならない
これらの状態になってしまう方は、噛み合わせに問題がある可能性があります。
心と身体の健康を守るためにも、気になる噛み合わせをそのままにせず、ぜひ当院までご相談ください。
顎関節症Temporomandibular
『顎関節症』は、顎の関節やその周りに何らかの異常が現れる慢性的な疾患の総称で、主に以下のような症状がみられます。
- 顎が痛い
- 開口障害(口を大きく開けられない・口を開けづらい)
- 関節雑音(顎を動かすと「カクカク」「ミシミシ」という音がする)
- 噛み合わせに違和感がある
顎関節症の原因はさまざまであり、主に以下のようなものとなりますが、1つではなくいくつも重なって発症していると考えられます。
- 噛み合わせが悪い
- 食いしばりや歯ぎしりをする
- 偏咀嚼(左右どちらか一方でばかり噛む)の癖がある
- 頬杖・猫背・うつ伏せ寝などの癖がある
- ストレスがある(ストレスにより無意識のうちに食いしばりや歯ぎしりを行なう)
- 食事や歯科治療などで口を大きく開ける
顎関節症の治療方法は、以下のように原因を解消するための治療と、痛みなどの症状を和らげる治療を組み合わせて行ないます。
- 認知行動療法(癖や習慣などを自覚して、それを取り除く)
- 運動療法(口や顎を動かす訓練を行ない、口がきちんと開くようにする)
- スプリント療法(スプリントというマウスピースのような装置を使う)
- 咬合療法(噛み合わせを治療する)
- 物理療法(痛みを軽減させるために患部を加温・冷却する)
- 薬物療法(鎮痛剤や筋弛緩剤を使う)
顎関節症をそのままにしておくと全身の不調が続き、快適な生活を送れなくなってしまいます。思い当たる症状がある方は、早めに当院までご相談ください。